鉄人風麻婆豆腐 〜 コンセプト
  Bean Curd with Meat of the Szechuan Iron Chef Style --- Concept



 麻婆豆腐は、もはや日本の食文化に根付いたと言える。
 レトルト食品や、簡易調味料があり、中国料理店では、例え四川料理店でなくとも、麻婆豆腐をやっている店多数。
 しかし、まともな麻婆豆腐を作っている店は少ない。

 ご存じの通り、四川料理は辛い。これは、四川省が山に囲まれた盆地で、高温になりやすく、高温の割に、天気が悪く、晴れの日が少ない。
 土地柄、多くの川が流れている(四川と言うくらいですから)ため、川の水のせいで天気が悪いのだ。
 昔から「蜀犬日に吠える」という言葉がある。蜀(四川省)では、普段見えない太陽が突然現れると、犬が怪しんで太陽に吠える・・・それほど天気が悪いと言う事だ。
 川のせいで天気が悪く、高温で多湿。つまり、蒸し暑い気候。だから、汗をかきやすく、体から汗とともにミネラルが抜け、夏バテのように食欲がなくなる。

 しかし、四川料理は、ただ辛い料理ではない。四川料理は、「酸・甜・苦・辣・麻・鹹・香」の七味を使った料理と言われている。
 それぞれ、酸(ソワン)は酸っぱさ、甜(ティエン)は甘さ、苦(クゥ)は香辛料の苦み、辣(ラァ)は唐辛子の辛さ、麻(マァ)は四川山椒の痺れるような辛さ、鹹(シェン)まろやかな塩味、香(シャン)は豊かな香りを表す。
 ただ辛いだけでなく、ふくよかな香りで、豊かな味わいの料理なのだ。
 ふくよかな香りは、食欲を増進させ、食べる事でミネラルは補給される。辛さは汗をかかせる。かいた汗は、体の温度を下げ、涼しさを感じる。
 また唐辛子のカプサイシンは、体の抵抗力に刺激を与え、抵抗力を活性化させる。それにより、病気にかかりにくくなる。
 四川料理は、美味いだけでなく、体に良い医食同源の料理なのだ。

 麻婆豆腐の第一のポイントは、豆板醤で、美味い豆板醤を使う必要がある。
 市販されているもので、最も美味いのが、郫県豆板醤(ピー・シェン・トウ・バン・ジャン)。ピーシェンは、豆板醤の名産地。通常の豆板醤は、数ヶ月しか熟成させないで製品化するが、この郫県豆板醤(ピー・シェン・トウ・バン・ジャン)は、3年熟成もの。
 通常豆板醤の辛みは、食べた後から来るものだが、この郫県豆板醤(ピー・シェン・トウ・バン・ジャン)は、どんな魔法か食べた瞬間から辛い。熟成期間が長いせいか、深みのある辛さがある。
 そこにフレッシュな辛さを加えるため、李錦記辣豆板醤をブレンドする。
 第二のポイントは、四川花椒(ホワジャオ)四川花椒が入っていない麻婆豆腐は、食べる価値がないと思ってしまうほど。
 四川花椒は、強烈な辛さと痺れるような辛さをプラスする。
 この2つが、痺れるような辛さとストレートな辛さの、複雑な辛さを形成する。
 第三のポイントとして、堅くて美味い豆腐を使う。
 絹ごし豆腐も使ってみたが、この料理は堅い豆腐こそ良く合う。絹ごし豆腐を使うくらいなら、焼き豆腐や、厚揚げでも良いくらい。
 普通の木綿豆腐でも柔らかいので、重しをして水抜きして、堅さを増す。
 香りの成分として、炒めたニンニクと生姜、長ネギ、豆板醤、ゴマ油、そして何と言っても四川花椒と、ふくよかな食欲を増す香りがする。
 豆鼓は、黒豆の発酵調味料で、コクをプラスする。オイスターソースもコクをプラスする。

 何故鉄人風かと言うと、この料理の最終目標は、Szechwan Restrant 陳麻婆豆腐だからだ。
 自分なりの工夫は、ごく僅か。ニンニクの芽を入れて、シャキシャキとした食感をプラスしている事。
 もう一つは、炒めた挽肉を2ツに分け、最初に投入する挽肉は、麻婆豆腐の餡のダシに、後に投入する挽肉は、食べるために。
 中国料理では、挽肉でスープを取る技法がある。挽肉は、短時間で肉の旨みをスープに移す。
 逆に言えば、スープを取った後の挽肉は旨みが抜けて味がない。それを補うため、時間差で投入した後の挽肉が食べるために旨みを残す。
 この作り方では、Szechwan Restrant 陳の域には達していないが、陳健一麻婆豆腐店になら結構いい線行っているのではないかな。
 実際このレシピ通りに作れば、ほとんどの中国料理店の麻婆豆腐には、勝てる味に仕上がるだろう。

Last Update 2003.11.09 Created by Majin